長い休暇で生産性の高いドイツ、死んでまで働く日本

過労死、電通や三菱商事といった一流企業で入社1年目の新入社員の過労自殺、残業100時間、満員電車、、、と日本人の労働条件は世界一過酷と言っても過言ではないと思います。

そこでやっと労働環境の改善が叫ばれ、ネット上で ”先進国” ドイツの働き方が話題になったりしています。

そこで、私も住むドイツの労働条件や環境について見ていきたいと思います。

余裕があるドイツの労働条件

残業

まずは気になる残業。ドイツの労働法で定められている労働時間は日本と同じ1日8時間まで、残業は許されていません。というのは1日の労働時間は最長10時間までですが、週の最高労働時間は48時間まで、そして超過時間があった場合には6ヶ月以内に平均労働時間を8時間に戻さなければなりません。つまり残業は禁止なのです。そしてそれがちゃんと守られています。

・1日8時間労働
・1日最長10時間、週の最長48時間
・8時間を超えた場合は6ヶ月以内に平均8時間に戻す

ドイツでもブラック企業はありますし、現実にはこの規定どおりにはいかない中小企業はあります。しかし、大企業でそのようなところはありませんし許されません。そもそもそのような企業があったとしても誰も就職を希望しないでしょう。

その他労働時間に関する規定は

・日曜日に労働させてはならない
・少なくとも11時間の休息時間が必要

残業100時間なんてとんでもないです。ドイツ人にしたらまさに想像を絶する労働条件!日本はこの点完全に後進国ですね。一度日本から外に出てみればそれが如何に異常な状態かということが分かります。

休日

土日や祭日、もちろん休暇中も上司は部下に仕事を依頼してはいけないし、仕事の電話を掛けてもいけません。もちろん部下もメールをチェックする必要もありませんし、仕事用の携帯が鳴っても出る必要はありません。休日は休むためにあるもの。これが建前ではなくきちんと守られているということです。

もちろん、システム管理など仕事によっては土日に作業しなければならない職はありますが、それはもちろん労働契約書にその条件が明記されていなければなりません。

これは実際にドイツにある日系企業の方に聞いた話ですが、休日やクリスマス時期に働いてもらうためにドイツ人のシステムエンジニアを雇ったけど、労働契約書にそこまで明記していなかったために、もちろんクリスマス時期に働いてくれるはずもなく、簡単に解雇もできるはずもなく、困っているとのこと、、、もちろん契約書に書いてないことをやる必要はありません!

休暇 − Urlaub

ドイツ人にとって休暇(Urlaub)はとても大切です。休暇に行くために仕事してんのかって感じで、ファイナンシャルアドバイザーの僕としてはそこまで休暇にお金使わないで貯蓄したほうがいいんじゃないの、って思うような人もいます。

休暇はドイツ労働法上は以下のような規定があります。

・年間最低4週間
・休暇中の病欠は休暇に含まず
・原則年内、または3月末までに消化
・原則買い取りなし(契約終了時除く)

法定休暇は4週間ですが、6週間にしている企業も少なくありません。もちろんちゃんと消化します。うちの近所の人を見ていても、夏の4週間の休暇で2週間は海で2週間は山とか、2週間は子供も一緒に家族でその後夫婦でそれぞれ別々に1週間ずつの休暇とか、日本からみたら贅沢な休暇を過ごしています。

法定の4週間の休暇は週5日勤務であれば年間に20日、週2日勤務であれば年間8日間の有給があるということです。日本のように雇用に正規・非正規の違いはないので、フルタイムかパートタイムかの違いはあっても、労働法上の違いはなく、労働時間・休暇・給与などの条件も全て同じです。日本の非正規雇用制度は完全に雇用者に有利な制度になってしまっていますね。

それでも(それだから)ドイツの生産性は日本の1.5倍

とみてきたように労働時間が少なく休暇も多いドイツですが、ひとりあたりGDPは日本の1.5倍です。労働時間を加味して時間あたり生産性を比べたらさらに差が広がります。いったいどうしてこんなに差ができてしまったのでしょうか?

 

■ 意識の違い

単純に言えば仕事時間には仕事に集中し、休む時には休みます。仕事は時間内に終わらせるものという意識が上司にも部下にもあります。時間内に仕事ができないということは、上司の仕事の分配が適切でないか、その人が能力がないとみなされるからです。

日本で働いたことのあるドイツ人や、日本に出向に行ったことがある人にきくと、日本人は昼間はたいして仕事をしていないで話をしたり電話をしたりしていて、17時くらいからやっと仕事を始める、なんて印象があるようです。デスクの配置もドイツでは個室だったりや仕切りをつけて、大部屋に島状態にデスクを置かないことが多いようです。なので余計なおしゃべりなんてないわけです。

ちゃんと休暇を取ってこそ、大いに仕事もできるとも考えています。休暇を取るのが気まずいということもなく、みな「楽しんで来て」とニコニコと送り出してくれます。

僕もドイツに移住して当初は日系に勤めていましたが、休みを申請する度にあからさまにイヤミを言われながらも規定の休みを取っていました。これではなんのためにオレはドイツに来たんだって思ってたのが独立したいという強烈なネガティブな理由なひとつでもあり、またこれがクビになった理由のひとつでもありました。

 

空気読まない、契約書読む

やはり西洋というのは民主制の生まれたところであって、契約社会であるので、もちろん労働時間や休暇、どの業務をするかは空気の問題ではなくて、契約書に書いてあることが問題なわけです。

第一次ベビーブーマ世代のころは会社で運動会したりして日本の農村的共同体も機能していた時代もあったけど、今もこれからの時代もそれではダメですね。もう会社は共同体としての機能を果たさなくなってきているので、そこに縛られることは幸せになるよりもストレスの方が大きい。共同体に所属したら守られるという機能はとっくに失われているのに、組織に隷属する文化だけが残ってしまっている。これからは日本ももっと契約社会にならなければならなければ社員や仕事を受けるフリーランスの実質的な待遇は向上しないのではないかと思ってしまいます。

以前にフリーのイラストレータが本職の方と話したら、大手出版社からの定期的な仕事があるのけど報酬は振り込まれるまでいくらか分からないと聞いてたまげました。僕も勤めの時には労働契約書交わしてなかったですが、ドイツに慣れた今の感覚では考えられないですね。フリーであろうが、必ず条件を確認して合意しなければ仕事は始まりません。そうでなければ労使の健全な関係は作れないですよ。

それでももちろん不本意なことは起こるものです。もし労働契約上のトラブルがあれば、従業員は雇用主を訴えます。それなりの職についているひとは訴訟保険に入っていざというときのために自分を守ります。なのでまた雇用主も変なことはできないわけです。

 

■ 生活環境

ドイツの国土は日本と同じくらいの面積ですが、南部のアルプスに近い地方以外はほとんど山がなく平らで都市もほどよく散らばっています。山がないのでど田舎がなく、小さな街でも多くは最寄りの都市まで車で1時間くらいで行けます。

地方分権的でベルリン以外には大都市はなく、100万都市がいくつか、ヨーロッパ中央銀行やルフトハンザのハブ空港があるフランクフルトの人口は約70万人しかありません。

つまり実質的人口密度は高くないのでひどい渋滞もなく、もちろんぎゅうぎゅう詰めの満員電車もありません。ヨーロッパの中では都市に一番緑が多く、最も住環境がよいと言えるでしょう。実際ストレスの少ない都市ランキングの1位はドイツの都市、トップ10には4都市が入っています。

■ ストレスの少ない都市ランキング、トップ10に独から4都市

世界各地の都市の住民が感じるストレスを比較した最近の調査で、ストレスの少ないベスト10にドイツから4都市が入った。 - (1/3)

 

このような住環境の質の高さがストレスの低さ、生産性の高さにも繋がるのではないでしょうか。

それでつまり

と主にドイツのいい面を紹介してきましたが、ドイツでもストレスはもちろんあります。仕事ができなくなる一番の原因は病気でも事故でもなく、精神的なストレスです。まあ、でもこれは多かれ少なかれ先進国の病ですね。

それでも日本と比べればすし詰めの満員電車はなく、渋滞も少なく、もちろん過労死もなく、自殺も少なく、より開かれた社会で同性婚も可能だし、ストレスはあきらかにより少ない社会と言えるでしょう。

同性婚って自分は関係ないと思うかもしれませんが、それだけ社会が多様性にオープンであるということの証です。だから僕のような外国人であっても住みやすいのです。

エンジニアや専門職など職業によってはドイツや海外への転職は比較的簡単です。場所を変えるだけで全く違う環境を簡単に得ることができます。

少しの勇気で行動を起こすことができれば。もっとも誰にでも勧めるわけではないですが。

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